A Dog on the Moon
描ける
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- 「「絵が描ける」っていう言葉って不思議だと思わない?」
- 補助者の言葉はいつだって唐突だ。だが行政書士はいつだってその言葉に付き合うことにしている。補助者は人格的にはかなり良い人間だ(と思う)し、行政書士が一人では思いもしない問答に付き合うことで脳のトレーニングにだってなる。そう信じている。
- 「だってさ、絵なんて誰だって描けるよ。世の中にはイルカが描いた絵なんてものまであるんだよ。」
- 「イルカが描いた絵がこの世にあるからって誰だって絵を描けることにはならないだろう。」
- 「うん、それはまあそうなんだけどさ、だからさ、イルカが口に咥えて筆で書き殴ったものだって「絵」と呼ばれるわけだろ?じゃあ、キャンバスの上に点のひとつでも打てばそれはもう絵じゃない?だよね?」
- 「なるほど、その理屈でいくと絵が描けないという意思表示はどのような状態を表すのか、という疑問が発生しなくもない。」
- 「だろ?もちろん、人の事情ってのはさまざまだからさ、絵に対してなんらかの事情を抱えてて描けなくなっちゃったって人がいる可能性は否定できない。でも言いたいのはそういうことじゃなくて、特段の事情があるわけでもないけど、例えばちょっと犬の絵描いてみてとか言われて、ごめんなさい、僕、絵は描けないんです、っていう感じの話。「描けない」じゃなくて「描かない」じゃないのかって。」
- 「うんうん、いいね。じゃあこういうのはどうだろう。その人物は実のところ、物理的にも心理的にも犬の絵を描くことには何の問題も抱えていない。だけど、犬の絵を依頼された時たまたま気分が乗らなくて断りたかった。でも「描かない」なんてはっきり断ったら今後の付き合いに差し支えると社交上判断した。つまり言葉をソフトにしようと意図した結果「描けない」という言葉が選択された。」
- 「たまたま気分が乗らないって?」
掛ける
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計りに掛ける
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「知らないよ。毎朝必ず食べることにしているお気に入りの食パンを焼きすぎて消し炭みたいにしちゃったけど、それはすごく美味しいパンだし、手に入れるのもなかなか骨が折れる代物だからすごく悩んだ。食べるには焦げすぎている、しかし捨てるにはもったいな過ぎる。まあその選択を計りに掛けたってわけだね。」
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「で、そのパンをどうしたの?食べたの?食べなかったの?食べたとしたら、どんな食べ方?やっぱりバター?それともジャム?まさかバターの上にジャムとか?」
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椅子に掛ける
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火に掛ける
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少し離れた場所にある椅子に腰掛けていた事務員がゆっくりと立ち上がり、水を張ったヤカンを火に掛けた。
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「食べた。まさかのマスカルポーネ&ジャムで。マスカルポーネの濃厚さとジャムの甘酸っぱさが焦げの苦さを中和してくれるからね。ちなみにジャムはアプリコットだ。」
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「おお〜!」
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「そんな大事件が朝からあったんだから、同じ日の午前中に犬の絵なんて描けっこない、そうだろ?」
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「たしかにそうだ!お気に入りの食パンを好みの焼き具合に仕上げられなかった日は誰だって意気消沈するもん!」
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「な?そんな人が正確には「描かない」と言うところを「描けない」と表現したからと言って、誰が責めることができようか。」
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「ホントだ。自分の思慮の足りなさを痛感したよ。」
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服を掛ける
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「いいんだよ、誰にだって間違いはある。それに気づいて繰り返さないことが重要なんだ。さあ、コートを脱いでそこに掛けなさい。」
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椅子に掛ける(再掲)
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「うん、繰り返さないことが重要!あんまり気になる話だったから、コートを脱ぐのも忘れて話しちゃった。」補助者はそう言ってコートをコートハンガーに掛け、椅子に腰掛けた。
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キッチンからは幸せの匂いが漂っていた。コーヒーと焼かれたパンの匂い。朝に鼻腔をくすぐるものでこれ以上のものがあるだろうか。
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塩を掛ける
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駆ける
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その日の夜、幸福を具現化したかのようなサンドイッチのことを思い出しながら、行政書士の想いは夜の空を駆ける。
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空から眺めた自分の事務所はちっぽけな存在で、見つけるだけでも簡単じゃない。
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いや、それだけじゃない。聳え立つスカイクレーパーだって、地上から見た時の圧倒的な存在感はまったく影を潜めている。
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欠ける
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- 空を漂う行政書士の目にはっきりと映るのは、月。
- 月は欠けていくサイクルに入っている。その様は仄かな不安と大きな期待を呼び起こすものだった。
賭ける
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- 賭けるしかないのだ、と行政書士は思う。
- 賭けて、初めて勝負が始まる。どちらに賭けるかで勝負が決まるのではない。
架ける
描ける(再掲)
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- お月様に犬の絵だって描けるよ。
今週のお題「かける」に寄せて書いてみました。
はてなブログに記事を書くのは久しぶり(実に1ヶ月以上のブランク)になります。
その間、ふとした拍子に別の場所で文字を書く楽しみを知ってしまい、はてなブログにご無沙汰する結果となったのです。
その別の場所とは、iPhoneのメモアプリです。
そこにただダラダラと文章を書くのでは、当然楽しくも何ともありません。
しかし、箇条書きの機能を使って書き始めた時、私の脳内にイカズチが走りました。
「か、書きやすーい!」
それ以来、予定も日記も、あらゆることをメモアプリに書きまくっていたのです。
で、さすがにはてな放置しすぎかな…と恐る恐るログインした私の目に静かに、しかし確かな存在感でアピールして来たのが下の記事でした。
なんとまあ、人生というのは本当に不思議なものです。
自分だけの大発見!なんて興奮していたのに、多くの方はすでにお使いだったのですね(当たり前か)。
この記事ではWorkflowyというソフトがおすすめされていましたが、私はそんなに本格的なものを書くわけでもないので、iPhoneのメモアプリで十分です。
外で思いついたことはどんどんメモアプリに書き込んでいって、帰宅したらMacBookでメモ開いて、はてなの編集画面に貼り付けて…って感じで、書いた形跡をあえて残したのが今回のエントリになります。
実際に使うアプリはどれでもいいと思うんですが、アウトライナーの威力をまだ試されてない方はぜひ一度お試しください!
犬の絵だって描けちゃいますよ!